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2020/04/07(Tue)Case

東京タワーの真下にあるフレンチレストラン タワシタ様がプロデュースされる、京都宇治産シングルオリジン抹茶専門の茶屋 IPPUKU&MATCHA様。

江戸時代からつづく京都宇治の老舗農家が丁寧に作られる希少なシングルオリジン抹茶を、オリジナルの江戸切子グラスで堪能するという、作法にとらわれない新しい抹茶体験を提案されています。

2019年秋にオープンされた日本橋三井タワーの店舗では、テイクアウトカウンターと店内奥にあるカウンター4席のみの茶室にて、抹茶を飲みながら、抹茶にぴったりの洋菓子を楽しんでいただけます。
(茶室はご予約の方が優先となりますが、当日空いていればご案内が可能です)

ユニエルでは、下記を担当させていただき、店舗オープンまでの道のりをご一緒させていただきました。

  • コンセプトコピーの策定
  • ビジュアル、撮影ディレクション
  • ブランドサイト制作
  • リーフレット制作

IPPUKU&MATCHA ブランドサイト PROJECT詳細ページ

今回のCASEでは、IPPUKU&MATCHA様の事業立ち上げ経緯から、ユニエルとのお取り組みについて、そして、その後の反響など、タワシタ代表取締役 佐藤拓也さま、IPPUKU&MATCHAエグゼクティブディレクター 小手川由佳さまにお伺いしてきました。


自分たちの手でオリジナルに。新規事業への想い

大谷:
「IPPUKU&MATCHA」事業スタートのきっかけを、改めてお教えいただけますか?

佐藤拓也さま(以下佐藤さま):
4年ほど前に、京都宇治の茶農家さんから「宇治駅の近くで抹茶カフェを開きたい」とご依頼をいただきました。
当時私たちが運営していたカフェがあったのですが、そのカフェのイメージを気に入っていただき、ご連絡いただいたようで。

京都宇治の茶農家さん運営の抹茶カフェの、メニューやオペレーションなど、トータルでプロデュースさせていただきました。

茶農家さんと知り合い、抹茶カフェの商品開発を行う中で、抹茶の魅力、素晴らしさにのめり込んでいって、
これを東京でもぜひ展開させてもらいたい、と考え、2017年からひしひしと計画を進めていきました。

大谷:
IPPUKU&MATCHA様がオープンされたのが、2019年の秋でしたので、準備期間をしっかり作られて進められていたのですね。

佐藤さま:
そうですね。
宇治の抹茶には長い歴史があり、ビジネスとして関わるからには、抹茶に関わる方々やその歴史も背負えないといけないという使命感を感じていたので、準備期間には、抹茶に携わられているいろんな方を紹介していただいたり、弊社スタッフも現地宇治に出向いて茶摘みを学んだり、日本茶アドバイザーの資格をとるなど、知見や人脈を深めていきました。

小手川さま:
抹茶のことを知っていく中で、IPPUKU&MATCHAが提案している「作法にとらわれない抹茶の楽しみ方」というコンセプトも導き出しています。

これまでセレモニーの一部だったり、敷居が高く感じられてしまっている「抹茶」を、より身近にライフスタイルに取り入れていただき、抹茶の良さを伝えていきたいと、現在の形が作られていきましたね。

IPPUKU&MATCHAの想いを世の中に伝えていく上で、ロゴや店舗内装、茶器、メニューの開発はもちろん、パッケージやカップ、スリーブなどの細かなツールひとつひとつも非常に重要となるので、私たち発信でパートナーさんを探していました。
ご縁もあってあらゆる方々にお力添えをいただいています。

大谷:
そのパートナーさんを探されている中で、ユニエルにも声をかけていただいったのですね。

佐藤さま:
ユニエルさんは、物凄く探しました。
ウェブサイトは、お店にお越しいただく方よりも、圧倒時に見てもらえる人数が多いじゃないですか。

事業形態も、これまでにない全く新しいものとなるので、何かの真似ごとや、すでにあるものではいけないなと考えていたのですが、ノウハウもなかったので難航していました。

知人にも相談をして、テンプレートを利用し、コストを抑える方法なども理解をしていったのですが、IPPUKU&MATCHAが伝えていきたいことを届ける場所にするには、それではしっくりこなくて。

私たちのオリジナルで素晴らしいものを作りたい、と考え、紹介してもらったのがきっかけでユニエルさんにお声かけさせていただきました。

小手川さま:
最初、とても長文のメールを送ってしまったことを覚えています。

IPPUKU&MATCHAを通して、宇治抹茶の魅力を伝えていきたい、という想いが強くあるので、それがメールの文章にも出てしまい、驚かせてしまったかな、と不安だったのですが、とても丁寧にご返信をくださったことを覚えています、
すぐに打ち合わせをさせていただきたい、と感じました。

大谷:
当時私たちは飲食業界の方とご一緒させていただく機会が少なかったのですが、いただいたメールの内容を拝見し、その想いに動かされた部分も大きかったと感じます。

オリジナルを作りたい、という考えでお声かけいただいたことは、とても光栄でした。

実際に一緒にお仕事をしてみて、大変だった部分などはありましたか?

小手川さま:
そうですね。私たちは普段あまりパソコンを使用する機会がないので、メッセージのやりとりや、遠隔で画面を共有して通話をしたり、そういったことに慣れていなかったので、最初は戸惑いがありました。

でも、わからないことを質問すると、私たちにもわかる言葉で、その場ですぐにご返答いただけて。

ただでさえ、いろんなツールに慣れない中だったので、それがとても安心感がありましたね。みなさんとてもお優しくて、社内でもよく話に上がっていました。

大谷:
ありがとうございます。
私たちの指針でもあるのですが、社内でも職種が異なるスタッフが多いので、誰もが理解できる言葉で話すことを大事にしています。

プロジェクトではお客様ともチームになるので、そこでコミュニケーションを円滑にする必要があり、「言葉」というのは非常に重要だと考えているので、そう言っていただけて嬉しいです。


初期設計で思想を可視化。各工程に通ずる軸を

大谷:
今回ユニエルで担当させていただいたメインはブランドサイトの制作。
サイトの中のビジュアルディレクション、撮影ディレクションから、コンセプトコピーもご提案させていただいています。

ヒアリングと業界分析を重ねる中で、「抹茶」がSNSを中心に注目度が上昇している中で、日本の文化としての「お茶」や「お茶の効能」について、より本物の「お茶」への追求も進んでいる背景がありました。

ブームや流行と、本物を求める思考の相違、事業の強み、脅威を整理させていただき、制作の方向性プランに落とし込んでいます。

特に、「抹茶」という同カテゴリの店舗が多くなってきている傾向もあったので、類似と認識されてしまうリスクもあり、IPPUKU&MATCHA様の優位的情報を視覚的に伝える必要性を感じました。

その取り組みの一貫として、今回はウェブサイトのファーストビューで使用されるコンセプトコピーもご提案させていただいています。

小手川さま:
設計をご提案いただいた際に、コピーもご提案いただきましたよね。

私たちがIPPUKU&MATCHAとしてやっていきたいこと、「京都宇治の抹茶の素晴らしさを伝えていく」という使命はあるのですが、これをどう言い表すのが最適なのか、自分たちだけでは出しきれない部分があり、悩んでいました。

ご提案いただいたコンセプトコピーを最初に拝見した際に、すぐに、「これだ!」となりましたね。


プランニング設計を元に、IPPUKU&MATCHAを体現させるためのコンセプトコピーを策定。

訴求すべきポジティブ要因
歴史のある抹茶の文化、そして宇治の文化を言葉として伝え、新たなトレンドとの融合を考慮し、潜在意識に訴求する。

伝えるべきメッセージ
独自で進んだ日本の文化と、歴史あるお茶の文化、IPPUKU&MATCHAが新たにはじめる事業とを結んでいく。

どのように伝えていくか
今まで誰も行えなかったことを、大義名分化し伝えていく。


佐藤さま:
実は、当初はコピーも含めウェブサイト全体を通して、新規事業だからこそこの方向性で良いのだろうか、という意見もありました。

大谷:
そうだったんですね。

佐藤さま:
今の時代、気になったものや場所があると、ウェブサイトなど、インターネットで検索をしてからそこへ行く、という導線があるじゃないですか。

私自身は、気になったらまずそこに行って体感したいタイプの人間だったので、そのウェブサイトの役割を無視してきてしまっていて。

なので、当初はウェブサイトの役割、効果というものを、あまり信用しきれていない部分もあり、迷いもありました。

しかし、そこでじっくり野田さんともお話しさせていただけて、初期設計に立ち戻り、私たちの事業のビジョンも再認識できたので、自信を持ってこれでいこうと感じられました。

大谷:
制作では、多くの方の手によってものづくりが進められるので、設計でプロジェクトの軸を構築することが非常に重要だと野田もよく言っています。

プロジェクトの本質を見失わないために設計を行っているので、今回それが役に立ったようで安堵しました。

小手川さま:
そういった部分でも、些細な疑問や相談など、細かく話をさせていただけたので助かりました。

実際にウェブサイトがリリースされてから、いろんな方に見ていただいた際も、みなさんとても褒めてくださいましたね。

大谷:
それは嬉しいですね。ありがとうございます。


ウェブサイトとリアル店舗。双方向でファンを巻き込んでいく

大谷:
ウェブサイトがリリースされたのは2019年夏頃でしたね。

小手川さま:
そうでしたね。
事前に認知をつけたいということで、店舗オープンに先駆けてウェブサイトを公開したいと考えていたのですが、江戸切子の繊細さと抹茶の鮮やかな緑色を掛け合わせたビジュアルは、オープン直前にお披露目したい想いもあり、公開日とメインビジュアルについて、ご相談をさせていただきました。

大谷:
お客様に向けて、オープンを心待ちにしていただけるように、とも考え、サイトを公開してからオープン日まで、メインビジュアルを徐々に切り替える仕様をご提案させていただきました。

大谷:
実際にお店がオープンされてから、事前にターゲットとして捉えていた客層との違いなどはありましたか?

小手川さま:
オープンするまでは、従来の抹茶の楽しみ方を求めていらっしゃる方も多いかと予想していたのですが、そんなことはなく。

私も店舗に立っていますが、「抹茶をもう少し気軽に楽しみたくて。」と、IPPUKU&MATCHAの提案に共感してくださっている方からのご来店がほとんどです。

すでにファンになってくださっている状態でお店に足を運んでいただいているので、お客様とも会話が弾み、お店にいてとても充実した気持ちで過ごせています。
事前にウェブサイトを見て来てくれるからこそ、実現できている環境だと感じますね。

作成いただいたリーフレットも、どなたかにご紹介したいときや、ご自宅に帰られた際に思い出してもらえたらと、店舗にきてくださったお客様へ、お店の名刺代わりにお渡しさせていただいています。

大谷:
みなさん、ウェブサイトを見てからご来店いただけているのですね。
リーフレットもご活用いただき嬉しいです。

佐藤さま:
店舗スタッフの採用も、ウェブサイトを見てからのご応募がほとんどでした。

実店舗オープンから募集を行った現在(2020年3月)まで採用が成功している中で、86%の方が、事前にIPPUKU&MATCHAのウェブサイトを見て応募してくれていました。

ウェブサイトを見て、日本の文化を伝えられるお店だと認知され、同じ想いを持った方を採用できたので、働いていても意思の疎通がしやすく感じます。

みんな抹茶が好きなので、自宅で練習したり、他店舗の調査に行っていたり、そういう自主的な行動をしてくれるスタッフばかりが集まる場所にできているのも嬉しいですね。

好きだからこそ、自分から勉強しようとするし、個々にそういうことができるようになると、商品の品質も保たれていく。どうやったら抹茶をより楽しんでもらえて、喜んでいただけるか、というのを考え続けられる環境が作れているので、新しい商品開発も進められているのだと思います。

大谷:
新しい商品、抹茶テリーヌもその一つでしょうか。
先日お店にお伺いした際に、小手川さんに試食をさせていただきました。

小手川さま:
はい。抹茶テリーヌも、何度も試行錯誤を重ねて生まれた商品です。
パッケージの箱一つ作るためにも、打ち合わせにも何回も足を運びましたね。

佐藤さま:
好きなので、それができて当たり前なのですが、好きでなければ当たり前ではなくなってしまうんですよね。
全てやらされている仕事になってしまう。

抹茶を好きになり、その良さを発信していくことで、パートナー様や一緒に働くスタッフ、お客様も含めて、共感してくださる方々と新しい関係性を築けてきて、新規事業の楽しさも感じています。

大谷:
これまで培われてこられた関係性も大事かと感じますが、新規事業をきっかけにまた新たな領域を広げていくことも楽しまれているのですね。

その上で、今後のIPPUKU&MATCHA様の事業展開など、どのようにお考えでしょうか?

佐藤さま:
日本の文化を伝えていくという想いの元、まずは、日本橋のこのIPPUKU&MATCHAをフラッグシップとして確立していきたいと考えています。

海外から日本に来られた方にもそうですし、日本の方にももちろん、宇治抹茶の良さを知っていただき、気軽に楽しんでもらいたい。

広く知っていただく上で、広告費用などをかけてPR活動をする方法もありますが、現在の事業のフェーズとしては、お店に足を運んでいただいた方ひとりひとりのお客様に着実にご満足いただける期待以上のものを提供し、ファンになっていただけたらと考えています。

小手川さま:
そのために、現在抹茶テリーヌもECサイトにてご購入いただけて、配送も承っておりますが、いつかお店にきていただけるようにとリーフレットを同封するなど、細かな工夫から取り組んでいます。

佐藤さま:
ウェブサイトでIPPUKU&MATCHAを知っていただき、リアル店舗へ足を運んでより深いファンになっていただく。その広がりから、世界の抹茶ファンのみなさまへ京都宇治の抹茶の良さをお伝えしていきたい。日本橋のIPPUKU&MATCHAを拠点に、京都宇治の抹茶の良さを世界中に伝えていく、という私たちの使命は変わらないため、事業がはじまった当初から考えていた海外での展開も、引き続き視野に入れ、世界中に発信していきたいと思っています。


IPPUKU&MATCHA ブランドサイト

Credit
Direction:野田 一輝
Art Direction:野田 一輝
Project Management:野田 一輝, 大谷 真美
Web Design:野田 一輝
Front End Engineer:石山 大輔
Web Motion Design:石山 大輔, 野田 一輝
Back End Engineer:後藤 寛一
Photographer:山田 将史

本記事内でふれた「抹茶テリーヌ」は、IPPUKU&MATCHA様 ECサイトよりご予約が可能です。
IPPUKU&MATCHA ECサイト

ユニエルの取り組みについては、プロジェクトページより詳しくご覧いただけます。